第一章〜ラルフとエレナ1〜





ここはクロノス城。


ようやく若葉が芽を出し、暖かくなってきたとはいえ、早朝の冷え込みはまだ

若干残っていた。ここクロノス城のメインストリートには、大勢の戦士や商人など

が集まりごった返している。今日はゲートの入り口からメインストリート周辺に

ウォーリアーの一団が立ち並び、周辺の商人達は、せっせと彼らに武器や

防具、さらには回復ポットなど、戦闘に必要なありとあらゆるものを提供して

いた。


ウォーリアー達は、魔獣の皮をなめした防具や、鉄で出来た武器・・・剣や斧、

その他、巨大な鎌やメイス等、思い思いの格好をしている。


その後ろにいる部隊、これはマジシャンの部隊だが、皆、日々の魔術の

修練により青白い顔をフードの奥から覗かせていた。


軍隊は南門へ向けて出発の準備をしており、これから援軍として最前線の

レティシャ砦へ向かう予定だった。


レティシャ砦にはセクリィス提督率いるパラディンの軍団が守備している。

これに対し、マタリエルの軍団・・・・ダークナイトの軍団が総攻撃をかけており、

一日でも早く、援軍が到着する事を待ち望んでいるのだ。コエリス教団は

ようやく重い腰を上げ、援軍を送る事となったのだが、如何せん兵士達

〜パラディンやウォーリアー達〜の士気は低く、このまま出発させても

本当にマタリエル軍を追い払う事が出来るのか、非常に不安視されていた。


と、言うのも、既にクロノス大陸の大半はマタリエル軍に征服されており、

大量の難民がここ、クロノス城へ流れ込んできている。マタリエル軍は屈強な

ダークナイトで編成されており、教団側は連戦連敗。

これでは士気が上がる訳がなかった。


しかし、今日のコエリス教団の公示により、士気は盛り上がってきた。

クロノス城の南西には、道から少し外れたところに道具屋がある。

その道具屋の近くに、連合政府の公示が掲げられていた。

ウーノス奪還の情報はここから広まったのだった。


「ウーノス城を取り返したんだとよ!」

「もうこれで安心なのかな!?」

「いや〜どうだろなあ、でも、今日出発の軍が前線に到着すれば攻勢に

 出るってよ!」

「じゃあ、取り敢えずお祝いだ!」

「やったぜ!マタリエルめ!ざまあみやがれ!」


この情報により、コエリス連合軍の士気は上がった。ウォーリアー達は

雄たけびをあげ、パラディン達は剣を掲げて神々へ祈ったのだった。


そんな人々の喧騒の中に深々とローブをまとった青年・・・

・・・いや、女性だろうか?


彼女の指には無数の指輪・・・・明らかにマジシャンの様な格好をしているが、

それにしては違和感がある。彼女は看板とその周りに群がる人々を見て

いたが、きゅっと口元を引き締めると、 きびすを返し、そそくさとその場を

立ち去っていった。