
「今日も失敗か。エリート提督があきれる」
「そういうな、ラルフ。お前だってこの前は、あの守備隊長のセルキスと一騎
打ちに持ち込んだはいいが、結局倒せなかったじゃないか。むしろ提督は
ジワジワと消耗戦に持ち込んで、なぶり殺しにしようとしているのだろう?
え?」
と、隣にいたダークナイトの幹部が、その黒光りする鎧を磨きつつ、ラルフに
答える。
「ちっ、セルキスめ。あんなのはゴミだ。次は必ず倒す。」
「そうだな、でも相手の実力を認められなければ、やられるのはアンタの方
かもな。己を知って敵を知れば、百戦危うからず・・・。」
「・・・・」
ラルフは苛立ちまぎれに、立ち上がって陣地を歩き始めた。
ラルフの幹部たちは、若輩の将軍のラルフに対して、割とざっくばらん・・・・
と、いうか横柄に接する。どうやら、ラルフは彼等から反感を買っているらしい。
しかし、ラルフはあえて逆らわずに無視している。
陣地を歩いていると、エレナがつかつかと、そばに寄って来た。
「ラルフ!この前の戦闘で、セクリィス部隊のパラディンを捕虜にしたでしょ?
あれを操れる様にしたの。洗脳ね、黒魔術の。よかったら見てみる?」
「・・・・・見せてくれないか?そいつを」
エレナは早速、捕虜のパラディンを連れてきた。パラディンは目が若干どんより
しており、表情はかなり暗い。
「貴方の名前と所属。それと出身は?」
「・・・私の名は、セントイライジャ=ティグレ。・・・・セルキス隊の守備兵だ。
出身はクロノス城。」
「貴方のこれからやるべきことは何?」
「・・・セルキス隊長の暗殺」
と、捕虜がそこまで言い終わるや否や、突然!!!
ラルフは捕虜を両腕で押さえ込んだ!!
そして、一瞬のうちに腰骨を破壊してしまった!血を噴出しながら、上半身と
下半身がグシャリと分離してしまう。
「・・・な、なんてことを!」
エレナは想像もつかなかった出来事に、さすがに面食らった。
「いいかエレナ。セルキスは俺が倒す!」
そう言い放ち、ラルフは立ち去った。
取り残されたエレナと、騒ぎを駆けつけたダークナイト達は、呆然とパラディンの
死体を眺めている。
既に空は明るみを帯び、日の出は間近。陣中にある松明の炎は、すでに燃え
尽きているのだった。
第二章 完
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