第二章〜絶望と野望3〜





 「今日も失敗か。エリート提督があきれる」

 「そういうな、ラルフ。お前だってこの前は、あの守備隊長のセルキスと一騎

 打ちに持ち込んだはいいが、結局倒せなかったじゃないか。むしろ提督は

 ジワジワと消耗戦に持ち込んで、なぶり殺しにしようとしているのだろう?

 え?」

と、隣にいたダークナイトの幹部が、その黒光りする鎧を磨きつつ、ラルフに

答える。

 「ちっ、セルキスめ。あんなのはゴミだ。次は必ず倒す。」
 
 「そうだな、でも相手の実力を認められなければ、やられるのはアンタの方

 かもな。己を知って敵を知れば、百戦危うからず・・・。」

 「・・・・」


ラルフは苛立ちまぎれに、立ち上がって陣地を歩き始めた。

ラルフの幹部たちは、若輩の将軍のラルフに対して、割とざっくばらん・・・・

と、いうか横柄に接する。どうやら、ラルフは彼等から反感を買っているらしい。

しかし、ラルフはあえて逆らわずに無視している。


陣地を歩いていると、エレナがつかつかと、そばに寄って来た。

 「ラルフ!この前の戦闘で、セクリィス部隊のパラディンを捕虜にしたでしょ?

 あれを操れる様にしたの。洗脳ね、黒魔術の。よかったら見てみる?」

 「・・・・・見せてくれないか?そいつを」


エレナは早速、捕虜のパラディンを連れてきた。パラディンは目が若干どんより

しており、表情はかなり暗い。


 「貴方の名前と所属。それと出身は?」

 「・・・私の名は、セントイライジャ=ティグレ。・・・・セルキス隊の守備兵だ。

 出身はクロノス城。」

 「貴方のこれからやるべきことは何?」
 
 「・・・セルキス隊長の暗殺」


と、捕虜がそこまで言い終わるや否や、突然!!!


ラルフは捕虜を両腕で押さえ込んだ!!

そして、一瞬のうちに腰骨を破壊してしまった!血を噴出しながら、上半身と

下半身がグシャリと分離してしまう。


 「・・・な、なんてことを!」

エレナは想像もつかなかった出来事に、さすがに面食らった。

 「いいかエレナ。セルキスは俺が倒す!」

そう言い放ち、ラルフは立ち去った。


取り残されたエレナと、騒ぎを駆けつけたダークナイト達は、呆然とパラディンの

死体を眺めている。


既に空は明るみを帯び、日の出は間近。陣中にある松明の炎は、すでに燃え

尽きているのだった。


第二章 完