第三章〜第三勢力の胎動1〜

「もう、何でそうなるのよ!?」
ぶつくさ言いながらも、せっせと飯を食べているのは細身の女性だった。彼女の
指先には魔力を秘めた指輪がはめられている。
「セクリィスは名将って聞いていたけど、聞いて呆れるわ。さっさとマタリエルを
おびき出してやっつけちゃえばいいのに。」
家の外からは、小鳥のさえずりが聞こえる。屋外で働くのはこの島には数少ない
男ども・・・彼らは朝早くから洗濯をしたり飯を作ったり、家事に没頭しているの
だった。
一方、食卓にいる彼女達は、まだ朝飯を食べているところらしい。太陽の光で、
家の中はポカポカと暖かい。
「そうは言っても、前面にはダークナイトの大軍。援軍はようやくクロノス城から
出てきたけど、未だに辿り着いていない。砦の物資はほとんどど尽きかけて
いるという話・・・。さすがにどうしようもないでしょ。」
と、これも細身の女性・・・カラーというバルキリーが答える。
「砦もクロノス城も放棄して、一気にマタリエルのところへ押しかければいいの
よ。私達だったら楽勝でしょ。」
彼女・・・ジャジメントはそう気炎を吐くと、一気にスープを平らげた。
ここバルキリー島にはアクモディウム五将軍のひとりアス=モレルが封印されて
いる。そして、それを見守るように女性主体の民族〜バルキリー達が住んで
いた。バルキリーは現在の戦争には積極的に参加しようとは考えていない。
バルキリー一族は戦争を好まないからなのだが、噂では、その攻撃力はパラデ
ィン達をも凌ぐと言われる。しかし、実際にバルキリーが戦うところを見たもの
は、ほとんどいない。
「お嬢様、デザートが出来上がりましたよ〜。でも、朝っぱらからこんなに
食べてよく太りませんねえ・・・感心しますよほんと」
料理長のカナーバはそういうと、食卓の上に緑色のプルプルする物体を丁寧に
置いたのだった。彼の作る料理は味は悪くないが、いつも見た目がグロテスク
だった。そんな彼の唯一の武器は、肉切り包丁だ。
「マタリエルさえやっつければいいのよ。」
そう言うと、ジャジメントは慌てるように、そのデザートに取りかかるのだった。。
 |
|