第四章〜激突1〜





クロノス城を出発したセス・ラロシュの援軍部隊、約7千の軍勢は、レティシャ砦

にあと1日の距離まで来ていた。既に日は高く、ウォーリアー達のあせもだらけ

の鎧の中には、汗がジトッと溜まり、さらにかゆみが悪化しそうだった。


彼らの行軍するのは狭い峡谷の底で、援軍部隊の列は細長く伸びていた。


一方、その頃、1万からなる、ミュータニォ主体の第二軍を率いるナリッチは、

崖の上からこの軍勢を眺めていた。ナリッチはダークナイトの黒光りする鎧兜を

着込んでいるが、その目線は赤く光っている。スクロールを使い、攻撃・防御の

力を増大させる魔法を自身にかけ、そのダークナイトの剣には、稲妻に似た

光が迸っている。


 「クロノス城の愚かなる者達よ。我、貴様らを駆逐し、マタリエル閣下への

 生贄とさせてもらうぞ!」


ナリッチは伝令に合図を送り、すぐさま遠距離射撃の準備に取り掛かった。





 「セクリィス提督!また奴等が攻勢を掛けてくるようです。」

 「今度はダークナイト・・・主力だな。」

セクリィス提督はそう言うと、伝令へ合図を送り迎撃の準備に取り掛かる。

レティシャ砦も戦の準備に忙しくなった。セス・ラロシュの援軍がこの砦に接近

している事は、ラロシュの配下によって報告を受けていた。しかし、ここに来て

敵の主力であるダークナイトが砦へ攻めて来た事を考えると、恐らく援軍に

対しても敵が押し寄せ、各個撃破を狙ってくるに違いない。


ちなみにセクリィスは、ウォーリアー出身のパラディンという、変わった経緯を

持つ。その彼の魔力のこもった斧の前に、無事に立っていられるものはない。

若い頃は、他のパラディン達の様に長剣を使っていたが、ある時、テラの町

付近の戦闘でモートゥースの群れに囲まれた際、彼の剣が折れ、モートゥースの

持っていた魔法の斧を奪って戦い、そして勝利した。それ以来、その斧が彼の

トレードマークとなったのだった。


 「・・・計画通りにやれ」

そう伝令へ伝えると、自らもその魔斧を手にして、じっと眼前の敵陣を

睨みつける。