第四章〜激突3〜

一時間後、
峡谷には魔物の死体が累々と横たわり、既にハゲタカの群れがご馳走の山に
群がり始めている。ナリッチの死によりマタリエル第二軍は完全に崩壊。
一方、コエリス教団の援軍は、敵残存部隊への追撃をあきらめ、さっさと砦へ
進軍していた。
そして、その頃レティシャ砦の前では、セクリィスの軍とダークナイトの主力部隊
が激戦を繰り広げていたのだった。
「・・・踏ん張れ!」
セクリィス提督は魔法の斧を両手に持ち、ダークナイトと戦っていた。既に4時間
近く休憩なしに戦い続けている。さすがに劣勢は覆しがたく、パラディン達も
ヒールが追いつかない状態だった。
ギーン!
セクリィスの斧がダークナイトの長剣と交わるが、彼は砂を蹴り、すかさず斧の
先でダークナイトを勢いよく叩きつけた。
「ぐぁぁぁぁぁ」
ダークナイトのなれの果てを見定め、すぐに次の敵に挑むのだった。
しかし、既に戦いは消耗戦となっており、3倍の数を相手にしている分、守備側
の方が不利だった。
「提督!一度砦へ引きましょう。これでは・・・」
「太死一番!一歩も引くな!!」
そう叫ぶなり、セクリィスは自ら先陣をきって戦い続ける。
一方、ダークナイトの将軍ラルフは、砦の手前、右翼方面に軍を率いて
パラディンの群れと戦っている。
「あ、危ない!」
エレナは、ラルフを背後から襲おうとしていたパラディンの足元に氷の矢を
放ち、パラディンを足止めした。そのパラディンをラルフは一刀両断に
斬り捨てる!
「余計な事を!」
素直になれないラルフだった。
いままで、ラルフが窮地に陥ると、エレナがそれとなく手助けしてきた。しかし、
現時点で 『それとなく』 手助けする余裕はない。エレナは引き続き近寄ってくる
パラディン達に片手で稲妻を放ちつつ、もう一方の手で氷の矢を放ち、敵を
足止めする。
ラルフはダークナイト達へ伝令を飛ばし、砦の部隊へ一斉攻撃を仕掛けようと
していた、まさにその時!!
峡谷の出口付近に到達したセスとセルキスの部隊が一斉にラルフの軍団へ
横槍を入れたのだった。
「ちっ!ナリッチの奴、しくじったな!!」
セルキスの守備隊はときの声をあげつつ、ラルフ軍の横っ腹へ一気呵成に
攻め立てた!
「我こそはセルキスなり!そこのダークナイト勝負しろ!!」
ラルフは口で答える変わりに、目をカッとひん剥くと、剣の応酬で答えた。
五合、十合・・・二十合とお互い自慢の剣を交えるが、どちらも決定打が出ない。
エレナは土煙の彼方に見えなくなっている。
「絶対にお前は俺が殺る!!」
「ふっ、まだまだ若いな、ダークナイト!」
ラルフはセルキスの胸元にダークスラッシュ・・・ダークナイトの上級技を
打ち込んだ!真っ黒な閃光が剣先からほとばしる。・・・が、それをギリギリ
かわしたセルキスは、お返しとばかりにショックウェーブを放つ。が、これも
ラルフは何とかかわしきった。お互いの距離が少し離れたところで邪魔が入り、
そこで両者は離れ離れになる。
そして、その日は再び剣を交える事はなかった。またしても、ラルフはセルキス
を討つ事ができなかったのである。
すでに太陽は砦の彼方へ落ち、暗闇の中をマタリエル軍の退却の合図が、
こだまするのだった。
第四章 完
 |
|