第七章〜最終決戦2〜


 「来たぞ!!!マジシャンの部隊、攻撃開始せよ!」

セクリィスの号令の元、コエリス神聖魔術師団の攻撃が始まる。

既にダークナイト2万の軍勢は砦の目前に迫っており、砦を駆逐しようと猛進撃

を続けていた。


 「提督!我々は砦の外に出ますぜ!」

 「・・・頼む!」


セス、ラロシュ、セルキスの三部隊は砦の外に飛び出し、ダークナイトの軍団と

一戦を始めたのだった。これに対し、マタリエル軍は中央が突出した陣形で

怒涛の突撃を開始した。


ラロシュは中央、セスは左翼、セルキスは右翼に陣取り、ダークナイトの軍団を

迎え撃つが、士気の下がった軍隊ほど脆いものは無い。1時間も経たずに

ダークナイトの中央突破を許してしまった。


だが、しかし!ここにきて、セクリィスの戦術が効を奏す。

セクリィスはそもそも正面からあたっては勝ち目が無いと踏んでおり、罠を

用意していたのだった。


砦に取り掛かったダークナイト達は・・・なんと、その目前で一瞬にして消さって

しまったのだった!


と、思われたが、実は大きな穴へ落ちてしまったのだった。


砦の周囲に大きな穴を作っておき、中には鋭利な刃物がずらりと並んで

いた。これにはダークナイト達もひとたまりもなく、次々に刃にかかり命を

落としていった!


これに呼応するように、左右の軍が中央のダークナイトを取り囲み、包囲する

形となった。


 「ぬうう、やるな」

マタリエル軍の提督は後方から戦況を見ており、中央の軍を一旦引き、様子を

見ようとしていた。


そんな最中、ふと見ると、セルキスの部隊の上に、大きな黒い影が見える。

この異変に気がつくと同時に、なんとも大きな物体が、上空から降ってきた!!













ドーン!!


土煙とともに、パラディン達を踏み潰す!

パラディンの群れは一瞬にして血煙をあげた。恐らく数百人が一瞬にして

大ダメージを受けたに違いない。


空から降ってきたのは、なんとカマキリに似た巨大な化け物だった。その化け物

はセルキス隊のパラディン達を、さらにその巨大な爪でなぎ倒し始めたの

だった。


 「こ、これは・・・あの魔力の波動は・・・まさか、ラルフ!!」


そういう間にカマキリの化け物・・・ラルフ=シュレーダーは、セルキス隊を

蹴散らすと、まっしぐらに砦へ殺到する!


 「そうか、ラルフは転生したのか。やるではないか。」


ふと提督はつぶやくと、胸元のペンダントを握り締める。


 「ならば、マタリエル閣下に捧げた命、我も転生し敵軍を蹴散らすぞ!」


そう言うと、提督はそのペンダント〜魚の鱗を模したもの〜を引きちぎり、飲み

込むのだった。すると、彼の体は大きな波動とともに、巨大化していく。しかも、

ただ巨大化するのではなく、魚の様な化け物へと変身していったのだ!













それを見た周りのダークナイト達は色めき立つ!

 「提督・・・スレイド提督!」





その頃、エレナは乱戦のさなかにいたが、ラルフが突然戦場へ降り立つのを

見ると、一瞬攻撃の手を止めてしまった。これを見た敵のマジシャンが

彼女へ炎の魔法を放つ。


一瞬の隙をつかれ、エレナは炎にその身を晒してしまうが、エレナ全くかまう

こと無く、巨大な化け物を見つめている。


 「ラルフ・・・生きていたのね・・」


そう言うと、胸元から黒い塊・・・どうやら何かの種の様だが、それを額に

押し付けた。その塊は黒孔雀の種だったのだが、その種は額から体の中に

入り込むと、体中に閃光が走る!!閃光が走ると同時に、その衝撃波で

エレナにかかっていた炎は消え去り、周辺の敵やみ方は一気に吹っ飛ば

される。


 「な、なんじゃ?この邪悪な波動は・・・?物凄い力だ・・」

付近にいたラロシュはそうつぶやく。















まばゆいばかりの光の中から現れたのは、なんとも巨大な孔雀の羽を

はやした化け物だった。


 「この、アイドラ家に伝わる黒孔雀の秘術こそ、最後の戦いに相応しい
 
 ラルフ、貴方だけいいかっこさせないわよ・・。」


心の中でそうつぶやく、エレナだった。


さて、この三匹の巨大な化け物を見たコエリス連合の兵士は、瞬く間に縮み

上がった。


 「なんだ・・・あの巨大なカマキリは!!!」

 「あの、魚の化け物・・・敵も味方も構わず食べているぞ!!」

 「く、く、孔雀の羽・・・・とんでもない攻撃だ・・・」


結果、兵士達の一致した意見は・・・


 「逃げろ!」


初めて見る巨大な怪物の異様な姿に恐れをなし、パラディン、ウォーリアー、

マジシャン達は一斉に砦へ逃げ始める。こうなると、戦況は一変するかと

思われたが、事情の飲み込めないダークナイト達も同様に戦々恐々と

なってしまうのだった。


しかも提督〜スレイド提督〜が敵も味方も関係なしに、その大きな口の中に

飲み込んでしまうので、結局マタリエル軍も統制が取れなくなってしまった。


 「ふはははは!我が血となり肉となるのだ!素直に食われてしまえ!」

そう言うと、スレイドは手当たり次第に、全てを大きな歯で食いちぎり、

飲み込んでしまう。


元々、スレイドはその作戦指揮能力もそうだが、彼個人の凄まじい攻撃力を

マタリエルに見込まれて、ここまでのし上がって来た。


マタリエルは彼の心の奥底にある貪欲さを見抜き、魚の鱗に似たペンダントを

与えていた。魚の形をした巨大な化け物は、とてつもない破壊力を誇り、全てを

飲み込む。


一方エレナは、アイドラ家に代々伝わる秘術を受け継ぐ唯一の伝承者で、

最後の戦いを決意した彼女は、この秘術を使ったのだった。彼女の攻撃で、

あっという間に付近にいたパラディン達がなぎ倒される。




これを見てとったセス、セルキス、ラロシュの3将軍は、この巨大な敵に単身で

戦いを挑むのだった。


 「さすがにやべえな、こりゃ。どうやって倒すんだ・・・」

セスは、セクリィスと対戦する夢を見た事があるが、さすがにこんな魚の化け物

と戦うことは想像した事がなかった。


 「とにかく突撃あるのみ・・・・か?」

 「そこのウォーリアー、逃げないのか・・・・。ならば食われてしまえ!」

スレイドは巨体を浮き上がらせたかと思うと、セスの真上に降り立ち潰そうと

する。が、セスは左に避け、一太刀スレイドに浴びせた。


 ガコッ!


逆にセスのギガツーハンデッドソードは跳ね返されてしまう。


すかさずスレイドは強靭な尾で叩き倒す!

凄まじい打撃を食らい、さすがのセスも吹っ飛んでしまった!


土を思いっきり飲み込んでしまったセスは、何とか体勢を立て直すと咆哮を

あげながら、パワーブレイクとバーサーカーアタックを叩き込む!しかし、

スレイドは物ともせず、更にセスへ体当たりをお見舞いする!!


 ガシッ!!


セスはこの瞬間、意識が半ば吹っ飛んでしまった。


セスの体は、衝撃で上空高く吹っ飛ぶ。そして、真下に大きな口を開けて構えて

いるスレイドに、簡単に飲み込まれてしまうのだった。





 「そこにいるのは・・・、セルキスか。その命貰い受ける。」

セルキスを先に見つけたラルフは、ウォーリアーの群れを殺すのを止め、

彼の元へ突進していった。


セルキスは思わず武者震いをし、彼の着込んだボーンアーマーがガシャリと

音を立てる。しかし、彼は覚悟を決め、この化け物と対峙する。ラルフ対

セルキスの最後の戦いが始まった。


鋭い爪でセルキスの動きをけん制すると、毒の霧を吹きかける!

セルキスはグレーターヒーリングをかけているが、毒霧の為に視界がぼやける。

すかさず、ラルフの爪はセルキスをめった打ちにした!


 「うおおおお!」

さすがのセルキスも、この爪の攻撃を止める事は出来ず、ジリジリと後退して

しまう。ラルフの一方的な展開だった。





 「黒魔術か・・・なかなかやるようじゃ」

ラロシュは孔雀の化け物に向かってそうつぶやくと、すぐさまシャスタを召還し

始めた。すかさずエレナは孔雀の羽でラロシュの体を激しく打ちつけ、呪文は

かき消されてしまった。


 「見えるであろう? 地獄の門が口を開けてそなたを待っている。」

エレナはそう言い放つと、ラロシュへ追い討ちをかける。ラロシュの緑色の防具

は、簡単にひびが入り、ラロシュ自身もダメージを食らってしまう。


ここでも一方的に、巨大な化け物がコエリス連合の英雄を圧倒するのだった。